
一杯のコーヒーが「冒険」になる――38explore FIKA38という相棒
夜明け前の山の稜線。テントの外はまだ薄暗く、空だけがじわりと青くほどけていく時間。バーナーでお湯を沸かし、コーヒーを淹れる。その湯気の行き先を、38面体の小さな桜のピースが静かに見守っている――38explore(38エクスプローラー)のFIKA38は、そんな情景がよく似合うギアです。
名前の「FIKA」はスウェーデン語で「ティータイム」。ただの休憩ではなく、「大切な人や自分自身と向き合うための、少し特別な時間」というニュアンスが含まれています。山桜を削り出して作られたこの小さな道具は、まさにアウトドア版のフィーカを静かに支えてくれる存在。軽さと静けさ、本物の質感が、山やキャンプ場でのひとときを、すっと一段上の時間にしてくれます。
38面体の山桜が生む、手のひらサイズの「居心地のよさ」
FIKA38を手に取ると、まず驚くのはその造形です。38面体に削り出された山桜のピースは、角が立ちすぎず、丸すぎもしない絶妙なバランス。指先を滑らせると、面から面へと小さな起伏が続き、いつまでも触っていたくなるような触感があります。
山桜の木目は、派手さはないものの、静かに奥行きがあって、光の角度で表情を変えます。朝の柔らかな光の下では穏やかに、焚き火の揺らぐオレンジの光の中ではどこか艶やかに。自然に溶け込む色合いでありながら、テーブルの上に置けば、周囲のギアをふっと引き締めてくれる存在感があります。
表面は滑らかでありつつ、しっとりとした木の質感が残る仕上がり。冬の山で冷え切った金属のマグを握ったときの「ひやり」とした感触とは対照的に、FIKA38はいつ触れてもほんのりとしたぬくもりを感じさせてくれます。人工的な光沢や装飾をそぎ落とし、「本物」の素材感だけを前面に出した、静かな佇まいです。
実際に山で使ってみた印象――「ただそこにある」ことの心地よさ
秋の終わり、標高2000mほどの稜線キャンプにFIKA38を連れて行ったときのこと。テントを張り終え、一息つこうとストーブでお湯を沸かしながら、FIKA38を小さなテーブルの上に置きました。風は冷たく、稜線にはほとんど人影がない静かな夕方。聞こえるのは、バーナーのかすかな燃焼音と、フライシートを揺らす風の音だけです。
コーヒーを淹れて、ふと視線を落とすと、夕日に照らされたFIKA38の山桜が、ほんの少しだけ赤みを帯びていました。特別なことは何もしていません。ただ、そこにあるだけ。でも、その「ただそこにある」小さな存在が、不思議と場の空気を柔らかくしてくれる感覚がありました。
別の日、河原のキャンプサイトで友人と焚き火を囲んだときは、FIKA38がちょっとした会話のきっかけにもなりました。
- 「この木のピース、何?」
- 「38exploreのFIKA38っていうやつ。フィーカって、北欧のティータイムのことらしいよ。」
- 「ああ、なんかそれっぽい雰囲気あるね。」
道具の細かなスペックを語るよりも、こうした何気ない会話が自然と生まれる。それが、FIKA38を実際に使ってみて感じた一番の魅力かもしれません。
「余計なものを削ぎ落とす」という贅沢
アウトドアギアの世界には、便利さや多機能さを競う道具がたくさんあります。一方で、FIKA38は機能を盛り込むのではなく、あえてそぎ落とした先にある豊かさを提案してくるギアです。
- 山桜という「本物」の素材を使っていること
- 38面体という、手になじむ立体造形
- 装飾やロゴを控えめにした、静けさのあるデザイン
- 自然の色や質感に溶け込むトーン
どれも「何かができるようになる」という機能ではありませんが、キャンプサイトのテーブルの上や、テントの前室にFIKA38が一つあるだけで、その場に流れる時間の密度が変わる感覚があります。必要最低限のギアだけを持って山に入るときほど、この「余計なものを削ぎ落とした」小さなこだわりが、心にゆとりをくれるのです。
他のウッドギアと比べても、FIKA38は一目でそれと分かる独特の形と、手触りがあります。丸太を輪切りにしたようなコースターや、直線的な木製テーブルとはまた別の方向性で、「木」という素材を楽しめる道具だと感じました。
コンパクトさと軽さが生む「連れて行きたくなる」感覚
山に登るとき、ザックの中身は一グラムでも軽くしたいものです。その中で、FIKA38のような一見「なくても困らない」ギアは、つい置いていきたくなる存在でもあります。しかし、実際のところFIKA38はとても軽く、手のひらにすっぽり収まるコンパクトさで、パッキングの邪魔になりません。
自分は、小さなソフトケースにFIKA38とお気に入りのコーヒー豆、シングルバーナーを一緒にまとめておき、「山専用のティータイムセット」として持ち歩いています。これをザックに入れるかどうかで、山行の印象が少し変わると感じているからです。
長い登りを終えた稜線、静かな湖畔のキャンプサイト、薄曇りの林間サイト。どんなシチュエーションでも、FIKA38を取り出してマグのそばに置くだけで、小さな儀式が始まるような気持ちになります。「ああ、今から自分の時間だな」と自然にスイッチが切り替わる。その感覚こそが、このギアの真価なのかもしれません。
自然との距離感を整えてくれる、小さな「間」
アウトドアで過ごす時間は、ただアクティビティを詰め込むだけではもったいないと感じています。歩く時間、焚き火を眺める時間、星空を見上げる時間。その合間合間に生まれる「間」が、自然との距離感をちょうどよくしてくれるからです。
FIKA38は、その「間」をそっと支える存在です。機能を主張せず、音も出さず、ただそこにとどまりながら、自分の中のスイッチをオフにしてくれる。そんな静かな役割を担ってくれます。
自然の中で過ごす時間は、心に豊かさをもたらしてくれます。同じように、日常にそっと豊かさを添えてくれるものを探している方には、豊かさ専門店 弁財天堂のようなショップを眺めてみるのも、ひとつの楽しみ方かもしれません。山から帰った後も、「豊かさ」というテーマでギアや道具と向き合う時間は、どこかフィーカの延長線上にある気がしています。
まとめ――FIKA38と過ごす、自分だけのフィーカ
38exploreのFIKA38は、派手な機能や主張を持つギアではありません。けれど、早朝の稜線でマグの横にそっと置いたとき、焚き火のそばで木目をぼんやり眺めているとき、その存在感は驚くほど大きく感じられます。
軽さ、静けさ、本物の素材感。余計なものを削ぎ落とし、自然に溶け込むデザイン。そうした要素が積み重なって、一杯のコーヒーやお茶の時間を、ただの水分補給ではない「自分と向き合う時間」に変えてくれるのです。
山でもキャンプ場でも、自宅のベランダでも。FIKA38をそっと手に取り、好きな飲み物を用意して、ほんの数分だけまわりの音に耳を澄ませてみる。その小さなフィーカの積み重ねが、日常を少しだけ冒険に近づけてくれるはずです。


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